野口曜の< 猫のいる生活 >

風邪で寝込んでおりました。

昨日から社会復帰。声は性別不明なままですが、今日は元気です。

本日は前回書いた、“福島の片田舎の小学生がどのように登下校していたか”について、少々噛み砕いてご説明させて頂きたいと思います。

私には3才下の口の達者な弟が一人おります。3才離れておりますゆえ、お互いに小学校生活の半分は、ほとんど1人での登下校でした。
唯一朝のみ登校班というものがありました。1~6年生で(近所とは言えない広い範囲の近所で)集まって登校していましたが、その集合場所は実家から1km位の所にありました。
前回書きましたが、通学距離は片道3kmです。雨の日も風の日も吹雪きの日も歩いて通うのです。それ以外の手段は小学生にはありません。
子供が往復6kmを毎日歩く。
信じられません。(自分の事だけど。)犯罪に遭わなかった事が・そんな小さな子供を1人で歩かせていた親が・寄り道、いわゆる買い食いを怒った先生が・サボりたくならなかった自分が。

そんな辛い登下校往復6km間、登校距離の短い級友には無い様々な出来事がありました。

物理的な面 ①歩いていてぶつかる壁
まず空腹です。ひもじいです。小学生は、というか野口家はケチ、もとい厳しかったので現金なぞそうそう持っておりません。そして夏は特にノドが乾きます。小学校を出る時にたらふく飲んだ水はあっという間に吸収され、半分の距離を歩いた頃その感覚に襲われます。
今なら免許・バイク・車・パスネット(地下鉄用カード)・スイカ(JR用カード)・パスポート(これはいらないか。)・現金(ショボイ大人なため、これは少々)・クレジットカード(一応大人なので)、一通りあります。現在の私なら間違いなくこのアイテムのどれかを使うでしょう。我慢?一度出来たからとて、もう出来ません。
物理的な面 ②時間
朝は早く起き早く家を出る。朝と夕方のアニメは絶対に見られません。子供にとっては苦痛です。今みたいに録画やDVDレンタルというものは普及していませんでしたから、見逃すと大変やり切れない事になりました。
物理的な面 ③食欲不振
空腹感の継続に加え過酷な通学環境。ご飯時には食欲がありません。
全速力で走った直後(週6日子供が長距離を歩くとはその位の疲れです。)、食事が出来ますか?答えはNOです。

こんな辛い通学環境の中、小さな楽しみがありました。
通学経路の飼い犬や飼い猫巡りです。理容店にはプードル(これが驚く程デカイ。)、その他民家の番犬お散歩中日向ぼっこ中の猫などなど。
その中でもひときわ思い出深い犬は、長い通学距離のほぼ中間地点にある酒屋さんの犬“まる”です。この酒屋さんでは代々、お店の名前を取って“まる”と名付け看板犬?番犬?にしていたみたいです。この“まる”、何代目かは分かりませんが黒地に月の輪熊のような白い模様が入っていてそれは可愛いわんこでした。給食の残りがある時は持って行ってあげ、その対価?にフワフワの毛皮をワシワシ撫でさせてもらっていました。習い事があり急いで帰る時、まるの可愛い目にやられないように道路の反対側を歩くのですがうっかり気になってチラッと見ると、行儀良くお座りし、しっぽを振ってこちらを見ています。何かを期待しています。そして一声「ワン!!(どうしたのさ!!と言う意味っぽい)」。
人間として犬飼いとして、道路を渡らざるを得ませんでした。
そしてこの酒屋さんにはいつもニコニコ朗らかなおばちゃんがいました。
私がまると遊んでいると、お店を出て来て「お帰り!!」といつも元気に挨拶してくれました。
この酒屋さんのすぐ横には神社に続く長い階段があり、神社でお祭りがある日などはこの酒屋さんが出店(屋台)の役割を果たしていました。そういう時は必ずおばちゃんが「(屋台で)祭りで出すおでんの味見してけ!」と声をかけてくれ、お店の入り口でお味見させてもらいました。それ以外の日でも、お饅頭のてんぷら作ったんだけど味見してけとか、冬の寒い日「温まってげ。」と言って出来立ての甘酒を出してくれたり。おばちゃんから「いつもまるにお土産ありがとう。」と(私の楽しみな事に対しての)お礼の言葉と、その上美味しい温かい物を何度となく頂いて、こっちがお礼を言いたい位でした。でもそこは子供だから、思っている事をうまく伝えられないまま時が過ぎてしまいました。
残念なことに、まるは私が小学校在学中に代替わりしました。
下校途中に出くわした可愛いまるのお葬式。おばちゃんと私、二人っきりのお見送りでした。
酒屋さんの裏手に少し高い丘になっている様な所があり、まるはそこに私があげたキーホルダーと一緒に埋められています。
私がグズグズ泣いているとおばちゃんが「ざざんぼ(福島弁でお葬式の意味)に来てくっちゃがら、これ、葬式饅頭。」と言って、パックに6つ入ったお饅頭をくれました。
おばちゃんに頂いた食べ物の中で、このお饅頭だけが唯一食べられませんでした。

小学校を卒業し、部活や受験で忙しくなり中学・高校の通学路とは反対方向だったのもあって、酒屋さんの前を通る事も少なくなってしまいました。
その後、高校を卒業し実家を離れてから、帰省の度口実を作ってはまたポツポツとその酒屋さんにお買い物に行くようになりました。おばちゃんは帰る度変わらず「お帰り!!」と元気に挨拶してくれ、そんなおばちゃんの姿を見ると、ようやく田舎に帰って来たなぁと何だかホッとしました。

2年前のちょうど今頃、帰省した際酒屋さんの前を車で通ると沢山の黒と白の花輪が出ていました。
ざざんぼ。
後で母に聞いた所、おばちゃんは癌だったそうです。
抗がん剤の副作用で抜けた髪を隠すため、かぶっていたスカーフ。ニコニコと元気に「お帰り!!」と声をかけてくれたあの時、おばちゃんはすでに癌だったのです。

6年分のお礼、言えないまま。
それが悔やまれてなりません。

まるとおばちゃんとの思い出。
東京という土地で生活している今も、私はその思い出に支えられています。
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by jojo-joyjoy | 2006-04-27 15:39
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野口曜 の 日常
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